====== もうけすぎは不利益 ====== **ブルネロクチネリ会長 ブルネロ・クチネリ氏** (日経新聞から) * ――会社はどういう存在であるべきでしょうか。 「人間は仕事を介して尊厳を高めることができる。社員に経済的な恵みだけでなく尊厳を与えるのが会社。重要なのは適度な仕事量だ。私たちは1日8時間労働を守り、平日午後5時半以降と週末はパソコンを開くことを禁じている」 「夜空を眺め、自分と対話する時間は創造力を高めてくれる。一方、過重労働は生産性が落ちるだけでなく、誰かの仕事を奪うことにもなる。私は今、1日7.5時間の労働時間に縮めることも可能だと考えている」 * ――利益の最大化を目的とする会社は、社員への還元を軽視する傾向にあります。 「私の家は小麦農家だった。最初の収穫物は必ずコミュニティーにささげていた。義務感でも見返りを期待しているわけでもなく感謝の念として還元する。どこにもルール化されていないが当たり前のことだった。企業も同じで、利益と還元に目を向けるべきだ」 「もちろん株式会社なので短期的な利益を上げる必要はある。ただ必要以上に利益を上げている会社から商品を買おうと思うだろうか。適度なバランスが今まで以上に重要な価値になっており、私は毎日、鏡の前でもうけすぎていないか自問している」 * ――なぜ社員への還元を重視しているのでしょうか。 「私たちは例外なくいずれ死ぬ。世界が与えてくれたこの美しい環境を守り、次の世代に引き継ぐ一時的な『番人』にすぎない。さまざまなモノがなくなっても尊厳を持った社員が次世代に引き継いでくれる」 * ――10月には1000年先のビジョンも発表しました。 「私たちがどうあるべきかを考えるには、長いスパンで物事を見る必要がある。1000年先について真剣に考えるのは突拍子もないことではなく、現に本社がある古城は700年前に建てられた。ローマには2000年前のコロッセウムが残り、多くの偉人の言葉も受け継がれている」 * ――テクノロジーの進化は利便性を高める一方、働く尊厳を損なうようにも感じます。 「テクノロジーは世界が与えてくれた素晴らしい贈り物だが、使い方によっては人間の魂を奪う恐れもある。特にこの30年間はテクノロジーに頼りすぎ、人間がコントロールされていたように感じる」 「2019年5月、(米アマゾン・ドット・コム前最高経営責任者〈CEO〉の)ジェフ・ベゾス氏が私たちの本社を訪れた際、2000年後の未来について語り尽くした。人間の尊厳を守りつつ、テクノロジーを適度に活用できるような新たな時代が始まるだろう」 * ――会社のあり方も今後変わっていくと考えていますか。 「利益と還元のバランスに加え、会社と家族のあり方も変わっていく。資本主義は不易ではなく時代に合わせて変わっていくべきだが、この200年間、ほとんど見直されることはなかった。家族との時間をベースに、改めて自らの仕事、会社について捉え直すことが新しいルネサンスだと考えている」 **Brunello Cucinelli** 1953年イタリア生まれ。78年アパレル会社ブルネロクチネリ創業。85年伊ソロメオ村の古城へ本社移転。「人間の尊厳を守る労働」を理念に職人学校など建設。 「ブルネロクチネリ」ってめっちゃお高いブランドですよね。貧しい人には買えません。はいはい。